送り火・迎え火の意味と由来
送り火と迎え火は、日本のお盆行事の中でもとくに大切な儀式です。
迎え火は、ご先祖様の霊が無事に家へ帰ってこられるように灯す火。送り火は、お盆の終わりに霊をあの世へ送り出すための火です。
その起源は平安時代ともいわれ、仏教や民間信仰が融合した行事として、現代まで受け継がれてきました。
火を使う理由には、霊を導く目印・魔除け・清めなど、複数の意味が込められています。
お盆と送り火・迎え火の関係
お盆はご先祖様をお迎えし、供養する日本の風習。
その始まりに迎え火を焚いて霊を迎え入れ、終わりには送り火で見送るというのが一般的な流れです。
つまり、送り火・迎え火は、お盆という行事の「入口」と「出口」を示す、極めて重要な役割を果たしているのです。
現代における送り火・迎え火の役割
現代では、住宅事情や生活スタイルの変化により、オガラを焚く代わりに電池式提灯やLEDキャンドルを使う家庭も増えています。
それでも、ご先祖様を思い出し、家族のつながりを感じる時間として、変わらず大切にされています。
送り火・迎え火はいつ行う?時期・日程・時間を徹底解説
送り火・迎え火の一般的な日時と時期
基本的な日程は以下の通りです。
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迎え火:8月13日 夕方(16時~18時頃)
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送り火:8月16日 夕方(同上)
これは多くの地域で行われている「8月盆」に基づいた日程です。
地域や宗派による違いと注意点
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東日本や都市部:8月13日〜16日(新盆)
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関西・北陸・九州など:7月13日〜16日(旧盆)
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沖縄・奄美地方:旧暦のお盆(年によって変動)
宗派によって細かな違いがあるため、地域や家のしきたりに合わせるのがベストです。
新盆・旧盆・お盆送り火(15日)など特別な場合
故人が亡くなってから初めて迎えるお盆を「新盆(初盆)」と呼びます。
この場合、送り火や迎え火も丁寧に行い、親族や僧侶を招いて供養するのが一般的です。
また、地域によっては15日に送り火を行う習慣もあります。
これは、15日に施餓鬼法要を行う宗派との関係があるため、地域差に注意しましょう。
送り火・迎え火の時間帯やタイミングの目安
夕方から日没前までに行うのが理想とされています。
暗くなってからでは霊が迷いやすいという考え方もあるため、日が落ちきる前に火を灯すのが良いとされます。
送り火・迎え火の手順とやり方【具体例つき】
準備するものと必要な道具(オガラ・焙烙・ロウソク・提灯など)
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オガラ(麻の茎)
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焙烙(ほうろく):素焼きの皿
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ライターまたはマッチ
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盆提灯(玄関に吊るす)
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ロウソクや線香
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果物・お菓子・花などのお供え物
これらはスーパーやホームセンター、仏具店などで手軽に購入可能です。
自宅・マンション・集合住宅での迎え火・送り火の方法
マンションやアパートなど火気使用が制限されている場所では、以下の方法がおすすめです。
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LED提灯や電池式キャンドルを使用する
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ベランダに焙烙を置き、少量だけ焚く(事前に管理会社に確認を)
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室内に飾るだけでも「形としての供養」になる
送り火・迎え火の手順と注意すべきポイント
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焙烙にオガラを乗せる
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火をつけ、煙が立ち上るのを待つ
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家族で手を合わせ、静かに霊を迎える/送る
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火が消えるまで見守り、安全を確認してから片付ける
※火を扱う際は必ずバケツや水を用意し、火事にならないよう十分注意しましょう。
迎え火送り火セットや代用品を使う方法
市販の迎え火・送り火セットには、焙烙、オガラ、ライター、簡易提灯が一式入っており、初めての方にも安心です。
代用品として、アロマキャンドルやLEDランプ、電子線香なども活用されています。
初盆・新盆・法要時の対応
新盆には、親戚を招いた法要や会食を伴うこともあります。
その際は、供え物や盆棚の飾りを丁寧に整え、僧侶を招く準備を行うのがよいでしょう。
送り火・迎え火は必ずやらないといけない?現代の事情とケース別対応
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送り火・迎え火をやらない理由や家族の事情
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火気使用ができない住環境
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忙しく時間が取れない
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宗教観の違い、無宗教の家庭
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高齢や身体的理由で難しい
このような理由から省略されることも増えています。
宗派・家庭・地域ごとの考え方と対応
仏教宗派でも、形よりも「心を込めた供養」が大事とされる考え方が主流になってきました。
できる範囲で、ご先祖様を偲ぶ気持ちをもつことが大切です。
やらない場合の供養や気をつけたいこと
送り火や迎え火を省略しても、以下のような供養をすることで気持ちを伝えることができます。
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仏壇に手を合わせる
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好物を供える
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精霊馬や飾りだけでも設置する
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お盆中に墓参りに行く
送り火・迎え火の供え物・飾り・手土産マナー
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送り火・迎え火と一緒に用意するもの(果物・お菓子・飲み物など)
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季節の果物(スイカ、桃、梨など)
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和菓子や落雁
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故人が好きだった飲み物(お酒やお茶など)
「好きだったものをお供えする」のが基本的な考え方です。
盆提灯・盆棚・飾り方のポイント
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提灯は玄関や仏壇に吊るす
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盆棚には線香・お花・位牌・お供え物を並べる
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精霊馬(きゅうりの馬、なすの牛)も忘れずに
飾りつけは家族で一緒に行うことで、思い出話にも花が咲きます。
供え物・ギフト・法要のマナーや注意点
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お供え物は日持ちするものが無難
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手土産は1000円前後の個包装のお菓子が喜ばれる
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のしは「御供」や「新盆御見舞」が一般的
送り火・迎え火に関するよくある疑問・注意点Q&A
東京や地域によって違うの?全国の風習紹介
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京都:大文字焼き(五山の送り火)
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長崎:精霊流し(灯籠を川に流す)
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富山・石川:灯籠流しとお焚き上げ
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東京:8月盆が主流だが、古くからの家庭では7月盆も
焙烙やオガラが手に入らない時の代用アイデア
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焙烙 → 金属トレイや厚手の陶器皿
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オガラ → 割り箸、新聞紙、線香のみで代用も可
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火が使えない → LEDライトや電池式ろうそくで代用
送り火・迎え火の言葉や案内・案内状の例文
「本年、故人○○の新盆を迎えます。
つきましては、ささやかではございますが、下記の通り法要を営みたくご案内申し上げます。」
まとめ・送り火・迎え火を通じて伝えたい大切なこと
送り火・迎え火は、ご先祖様への「ありがとう」の気持ちを形にする時間です。
忙しい日々の中で忘れがちな「感謝」や「つながり」を思い出させてくれる、大切な儀式でもあります。
形式にとらわれすぎず、できる範囲で心を込めて。
その想いこそが、何よりの供養になります。
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